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その10 「孤高のシャンパーニュ」

「シャンパンを飲むのは、どちらかの時だけ。恋をしている時と、していない時。」ーココ・シャネル

 上記の言葉に従い、日々シャンパーニュを飲もうと努力している私ですが、11月も半ばになるとソワソワし始めます。新宿伊勢丹で開催されるシャンパーニュの祭典、ノエル・ア・ラ・モードの足音が聞こえてくるのです(※1)。

 シャンパーニュ好きにとっては単なる催事の域を超え、もはや晩秋の風物詩と化している同イベントですが、毎年様々なテーマで来場者を楽しませています。

 開催12年目となる今年の目玉は2つ。1つは華道相阿弥流師範、アトリエSYUNKA代表の中村俊月氏による「生花とのマリアージュ」。シャンパーニュからインスピレーションを得て花に見立てた流麗なフラワーアレンジメントが会場に並び、来場者を迎えます。

 もう1つは音楽家・菊池成孔氏による「音楽とのマリアージュ」。日々演奏とお酒のマリアージュを考案しているという彼が、今回はシャンパーニュに合う音楽をセレクト。

 味覚を視覚・聴覚に昇華するという取り組みは、シャンパーニュ(広く言えばワイン)とアートに深い関わりがあるからこそ。音楽を聴き、花を愛でながらシャンパーニュを品定め……ついつい財布の紐が緩みそうです。

 今年は「ぶどう」「醸造」「熟成」をキーワードに数々のシャンパーニュがお目見えしますが、私の注目はルイ・ロデレールのブリュット・ナチュール2006年。ルイ・ロデレールから約40年ぶりに発売される新アイテムで、なんと世界的に有名なクリエーター、フィリップ・スタルク氏とのコラボ作品なんです。

 彼はあるインタヴュー(※2)の中でこう語っています。

「毎晩、外食やカクテルパーティに出かけて誰かと話しても、結局は誰かの言うことを繰り返すようになるだけで、何かを創造することはできない。人と話ばかりしていると、とても居心地が良くなりはするが、同時に独創性も失われていく。創造的になる唯一の方法は独りで居ることだ。誰もいない場所で、まっさらな紙やコンピューターと向き合うこと。それが、自分独自のアイディアと直感を見つけるために最適な方法だ。」

 このシャンパーニュは瓶熟成後に補糖をいっさい行わず、マロラクティック発酵もかけない超辛口タイプのブリュット・ナチューレ。孤高に作品造りに取り組むスタルク氏の創造性とルイ・ロデレールとの化学反応は、どんなシャンパーニュを生み出したのでしょう。確かめずにはいられません。

(※1)2014.11.19 wed - 11.24 mon((最終日午後7時終了)伊勢丹新宿店本館6階にて開催

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